*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
食事を終えた高坏を持って、六の君は塗籠を出る。




青年は安堵したように息をつき、褥に再び横になった。






塗籠から出て来た六の君を見て、露草が近寄ってくる。








「………姫さま。

お給仕など、お手を煩わすことはございませんのに。


わたくしにお任せくださればよろしいのですよ」







六の君は眉を上げ、驚いたような表情になる。







「あら、いいわよ、食事の世話くらい。


それに露草は、蘇芳丸がやはりこわいのでしょう?

無理をしなくてもいいのよ」







「……申し訳ございません………」








露草は恥じ入るように顔を俯けた。








「まぁ、気にしないで、露草。


私が蘇芳丸の世話をしていることを父上に黙ってくれているだけで、ずいぶん大きな協力をしてくれてるんだから」








六の君の温かい言葉に、露草は微笑んだ。






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