*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「おおっ、そんなに喜んでくれるとは!



私も嬉しいぞ!!」







春宮は浮き浮きとした声で言うが。







「…………そっ、なっ、なんなのですか、それは!?」







汀は蒼白な顔で、なんとかそれだけを言葉に出した。






すると春宮はにこにこと笑いながら、掌の上のものを撫ぜた。







「ん? これか?


これはな………私のとっておきの宝物だよ。


世にも珍しい、人面瘡のできた猫の膝の剥製だよ」







「……………っ!!」








春宮はよく見えるようにと気遣い、汀の顔にその不気味な物体を近づけてきた。






汀はもちろん顔を背け、再び夜着を頭から被った。





それを恥じらいと解釈し、春宮は汀ににじり寄る。





「ほら、御覧。


なんとも言えない良い表情をしているだろう。


なかなかに眉目秀麗な人面瘡ではないか」







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