*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
汀は慌てて夜着を引き寄せたが、春宮の力は思いのほか強かった。




結局、汀の姿はあらわになってしまった。





春宮はもう何も言わず、目をらんらんと輝かせて汀を抱きすくめた。






「……………!!」






耳許に春宮の息がかかり、あまりの気味の悪さに汀は声が出ない。







「…………あぁ、姫よ。



我が妻よーーー恋しかったぞ………」







背筋を何度も悪寒が走った。







「お………っ、おやめ下さい!!」






なんとかそう叫んだが、春宮の耳には届かない。





全身を硬くする汀の両手首を握り、褥に貼り付けるように押し倒す。








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