*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
汀は必死で身体を反転させ、うつ伏せの姿勢になる。




そのまま這いずるようにして褥から抜け出そうと試みるが。






春宮がそれを許すはずもない。




全身で抑えつけられ、汀はとうとう身動きもとれなくなってしまった。







「……………い、や………!」






呻くように汀は拒否の声を上げる。




春宮はその唇に、自らのそれを押し当てようとした。









ーーーその時。







わんわんわんっ!!!








栄耀殿の闇を、けたたましく甲高い声が切り裂いた。








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