*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
汀ははっと目を見開き、上に覆いかぶさったまま動きを止めている春宮を押し退けた。








「…………青丹丸?」







聞こえた声は、紛れもなく青丹丸の鳴き声だった。





ただ、どこから聞こえたのかが分からない。






(………な、なんで?



青丹丸は、父上の邸に置いてきたはず………)







その間も、鳴き声は続いている。





(…………近いわ)






汀はきょろきょろと首を巡らし、声の聞こえてくる所を探した。








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