*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
(あ…………っ!)





周りを見渡しながら耳を澄ませていた汀が、ひたと動きを止めた。




次にぱっと身を起こし、両手をついて這うようにしながら春宮の横をすり抜けた。





春宮は呆然としたように汀の一挙手一投足を見守っている。






汀はもはや春宮の存在など忘れてしまったかのように、目的のものに一目散に向かっていく。







「ーーーーー青丹丸! ここなの!?」






汀が辿り着いたのは、褥の足元に置いてあった唐櫃だった。





蓋に耳を当てると、中からくぅん、と声がする。




汀は慌てたように蓋を手に取った。






中から小さな丸いものが飛び出してくる。






「きゃんきゃんきゃん!!」





「あおにまろ〜〜〜っ!!!」





「…………ぅわあぁぁ〜〜〜っ!!」






感動の再会を果たして抱き合う二人の背後で、春宮は尻餅をついて後退りする。





足首を噛まれた苦い記憶が蘇ったのだ。







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