*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「んまぁ、なんて物騒なことをおっしゃるのですか」





汀は目を瞠って青丹丸を再び抱き寄せる。




この可愛らしさがなぜ分からないのかと、心底不思議そうに首を傾げた。





その腕の中におさまっている青丹丸が、春宮の方をじっと見つめる。




うー、という低い唸り声が喉から漏れていた。



耳と尻尾は警戒心丸出しでぴんと立っている。




もしも近づけば容赦なく噛みつくぞ、と言わんばかりの気迫を感じ取り、春宮は身震いした。






(………なんということだ。



またも犬なんぞに邪魔だてされるとはーーー)






今宵こそは夫婦(めおと)の契りを交わそうと意気込んでいた春宮は、出鼻を挫かれて途方に暮れた。








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