*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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「………さて、行くか」
まるで、ちょっとそこまで買い物に、というくらいの口調で、灯が呟いた。
目の前には、泣く子も黙る大内裏が広がっている。
「…………ほんとに入れるの、これ」
本日の仕事場を目の当たりにして、卯花が呆然としたように言った。
端が見えないほど遥かに続く築地塀の大垣ーーー外重(とのえ)。
その宮城垣に囲まれた大内裏は、いかにも難攻不落というように思われた。
しかも、いくつかの門には全て、重々しく武装した御垣守(みかきもり)ーーー宮中の門を護る衛士(えじ)たちが複数名ずつ配置されているのだ。
まだ実地の仕事に慣れていない四つ子たちは、一様に不安気な表情を浮かべている。