*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「なに弱気になってんだよ。


俺も灯も、三人衆までついてるんだ。


心配することないさ」






群雲は四つ子を安心させるように、朗らかに笑ってみせた。





しかしもちろん、心中は穏やかではない。





(ーーー内裏へ侵入する………。



もしも見つかったら………もしも捕らわれたら………。


死罪は免れない。



何がなんでも、四つ子を守らねば………)






白縫山でやきもきしながら待っているであろう檀弓が、怒り狂ったり悲しんだりするさまを思い浮かべて、群雲は気を引き締めた。






「とりあえず様子を見てみる」






そう言った灯は跳び上がって、近くの大木の枝に手をかけた。




そのまま勢いをつけて、枝を軸にして空中でくるりと回転し、さらに上の枝に脚をかける。




その動作を繰り返し、あっという間に天辺まで辿りついた。







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