*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「ん………?」





灯の唇から訝しげな声が洩れる。




ゆらゆらと揺れる明かりが見えたのだ。





どうやら、衛士たちの持つ松明の明かりらしい。





(走っているようだな………)






灯は耳を澄ましたが、さすがに遠すぎて声までは聞こえない。






ただ、複数の明かりが門の方へと移動していくのは分かる。






(交代の時間か………いや、それならば走る必要はないよな)






心中で考えを巡らせながら、灯は松明の動きに目を凝らした。








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