*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
松明の動きは門の寸前で止まる。





しばらくそのまま動かなかったが。



息を呑んで見守っていると、門の前に立っていた衛士たちが、一人を残してみな宮中へと入って行くのが分かった。






(…………内裏の方で、何かあったらしいな。


それで警備の配置を動かして、門の護りは薄く、宮中の護りを厚くするのか)







だとすれば、今こそ好機だ。







(………何があったのかは、あえて考えないでおこうーーー)






灯の脳裏に、青い瞳で天真爛漫に笑う破天荒な姫君の顔がちらついていたのは、言うまでもない。







それを振り払うように、灯は大木の天辺から飛び降りた。








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