*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
しかし六の君は構わずに話し続ける。








「とぉっても可愛い子犬でねぇ………本当に可愛かったのよ。


あんなに可愛い犬は、あれから一度も見たことがないわ」








「……………」








「裏山で遊んでいたときにね。

近くの竹藪の中で、小さく丸まって寝ているところを見つけたのよ。



毛色がね、櫨色(はじいろ)に近かったんだけれど、特に毛先がね、明るい蘇芳の色をしていて。

だから、蘇芳丸と名づけたの。




よく見たら、後脚に怪我をしていて、うまく歩けないようだったの。



だから、とにかく手当をしてあげて。



親に隠れて餌をあげたり、怪我が治ってからは、木の枝を投げて遊んであげたり………。



そんなふうにたいそう可愛がったのよ」








「………はぁ………」








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