*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………一体どうしたんだろうな。


こんなに手薄になっているとは………」






群雲の呟きを耳にして、藤波がくすりと笑う。





「青いお宝が、また騒ぎを起こしたんだよ、きっと」






群雲は目を丸くして藤波を見た。






「…………は? 騒ぎ?


右大臣の姫君、しかも春宮殿下の女御が?



………そのお姫さんてのは、そんなにお転婆なのか?」







「会えば分かるって」







藤波は肩を竦めて見せた。




その隣を走っていた楪葉が、じいっと藤波の顔を見上げている。






「…………なんだよ、楪葉」





「………藤波ったら、やけに嬉しそうに笑うのね。六の君の話になると」





「は? そんなわけないだろ」






じっとりとした楪葉の視線から逃れるように、藤波は足を速めた。









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