*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
差し出した手を避けるように汀が身を引いたので、まだ恥じらっているのかと春宮は微笑ましく思う。






「ほんにそなたは、奥ゆかしき姫よのう。


まぁ、そういうところも愛らしいがな………。



恥じらうことはないのだぞ、今宵から妹背(いもせ)の仲になるのだからな」






(………やっぱりこの人には、一生話が通じるとは思えない!)





汀は絶望的な表情になった。





春宮は無理やり近づき、露草を押しのけて汀の腕を握る。



ぐいと引っ張り、力任せに立ち上がらせると、腕の中に抱えこんだ。




その勢いで、汀の腕から青丹丸が転がり落ちた。





「青丹丸!! 大丈夫!?」



「………きゅうん」




青丹丸が衝撃で目を回してしまったので、ここぞとばかりに春宮はその首根っこをつかんだ。



そのまま近くにあった冠箱ほどの大きさの筥に入れ、蓋をしてしまう。







< 517 / 650 >

この作品をシェア

pagetop