*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
春宮に抱きすくめられて身動きもとれない汀は、驚いたように春宮を見上げた。





「春宮さま、なんてことを!!


青丹丸がかわいそうですわ!!」






「なに、我らの睦み合いの間だけ、大人しくしていてもらうのだよ。


すぐに出してやるから、安心せい。



それよりもな、あんな小汚い犬なんかより、もっと珍しく素晴らしい宝が、私の塗籠にはたくさんあるのだよ。


今すぐに見せてやるから、さあ、急ごう」






「い、いやですわっ、見たくなどございません!!


どうせ不気味なものばかりなのでしょう!?」






とうとう、世継ぎたる春宮への遠慮と敬意も忘れて、汀は大声で拒否した。



しかし、上機嫌に浮足立っている春宮の耳には、都合の悪い言葉など入って来ない。







< 518 / 650 >

この作品をシェア

pagetop