*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「それでね」








六の君は今度は打って変わってうきうきした様子になり、なおも言葉を続ける。








「あの人を見た瞬間に、私、はっ、と思ったのよ。


あの髪色は、子犬の蘇芳丸にそっくりだ、って。



しかも、怪我をしているし。


なかなかこちらに懐いてくれないところも、なんだか似ているじゃない。




あの人は口をきいてくれないから、名前も分からないし………。



だから、蘇芳丸と呼ぶことにしたの」









「………さようでございますか」










露草は魂の抜けたような声で言い、こくりと頷いた。








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