*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「あの………私、父上の所には戻りたくないの。


だから、あなたたちと一緒に行きたいんだけど………いいかしら?」






汀がにこにこと微笑みながら言うと、糸萩と楪葉がすぐに頷いた。






「もちろん!!


だって灯のお嫁さんになるんでしょ?」





「そうよ、ぜひ山に来て!!」







屈託なく言われて、汀は首を傾げる。






「………え? お嫁さん?」






そして、傍らに立っていた灯を見上げる。






「そうなの? 蘇芳丸」





「………俺に聞くな」






眉間に皺を寄せて顔を背けた灯を見て、群雲は苦笑した。







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