*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「よし、お前さんの気持ちは分かった。


白縫村は来るものは拒まないーーー。


お前さんが来たいと言うなら、俺たちは受け入れるよ」






「まぁ、ありがとう。嬉しいわ」







群雲は今度は露草を見る。






「さて、汀はこう言っているが………。


お前さんはどうする?」






「ええ、あの………」







俯いた露草を安心させるように、糸萩がその背中を軽く叩く。




露草は微笑んで顔を上げた。







「………わたくし、姫さまのお父君のお邸で女房としてお仕えしていて………。


里のほうは父も母も既に亡く、今は兄とその妻が暮らしておりますの。


………あの家はもう、わたくしの家ではございません。



お許しいただけるのなら………姫さまと共に行きとうございます」






露草の言葉に、群雲が大きく頷いた。





そして、汀の腕の中の青丹丸を見つめる。





「お前さんも、ついてくるかい」




「わんっ!!」






青丹丸は尻尾をぴんと立て、短く鳴いた。







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