*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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「…………許せん!!
世継ぎたる私を、こけにしおって………」
命からがら瑞雲殿まで戻ってきた春宮は、苛々としたように爪を噛んだ。
乱れた心を鎮めようと、のろめきながら宝物庫へと入っていく。
長年の執念の証をうっとりと見回すと、自らに語り聞かせるように呟く。
「…………なんとしてもここに、青き瞳と赤き髪をーーー」
それらがここに並ぶ様子を想像して、春宮はにんまりと微笑んだ。
珍品好きの春宮の野望が尽きることはない。
これまで見てきた中でも最高の秘宝とも言える汀の瞳と灯の髪を、あっさり諦めるはずもなかった。
………けれども、そのために春宮が行動を起こすのは、もう少し先の話である。