*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
小桃が訝し気な表情で灯に問うのを聞いて、汀が口を開いた。





「私は汀というのよ。


これからこの白縫山でお世話になることになったの。


よろしくね、小桃ちゃん」






樹々の枝葉の向こうに見えるよく晴れた空と、そっくり同じ色の澄み切った瞳。




汀の勿忘草色の瞳を見て、子どもたちはあんぐりと口を開いた。





しかし、小桃だけは険しい顔をしている。






「…………ねぇ、灯。


この人、ずいぶん高貴そうな身なりをしてるけど………なんで白縫山に来たの?」






すると、小桃の傍らに立って汀に見惚れていた少年真菰が、はっと気づいたように隣の真砂の袖を引いた。






「なっ、なぁなぁ、真砂!!


この人、母ちゃんたちが今朝話してた、灯の花嫁じゃないか!?」






「あっ、そうかも!!


すごくきれいなお姫さまだって言ってたもんな!!」







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