*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
ぼんやりと絵巻を開き、見るともなく眺めていると。





渡殿の方から、足音が聞こえてきた。



どっしりとした重みを感じさせる鷹揚な足音に、露草ではないことを六の君は瞬時に悟る。






(んまぁっ! たいへん!!)






六の君は慌てて立ち上がり、開け放しになっていた塗籠の妻戸を閉め、屏風を持ってきて妻戸の前に立て、さらに念を入れて几帳を屏風の前に置いた。




そして自らは、御帳台(みちょうだい)の陰にさっと身を隠す。






「ーーー六の君よ」






半分下げられた御簾をくぐって入ってきたのは。




六の君の実父、右大臣萩原兼親であった。







(………あぁ、危なかった……。



危機一髪とはこのことね………)








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