*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
真菰と真砂のやりとりを聞いて、小桃は大きく目を見開いた二人を見上げた。






「…………なっ、う、うそ!?」






小桃から睨むように見つめられ、真菰は唇を尖らせる。






「うそなんかつくもんか!


本当だよ! なぁ、真砂」






「あぁ、そうだよ!


母ちゃんが檀弓から聞いたって言ってたもんな」






「………うそだっ!!


小桃は信じないよ!!



ねぇ灯、うそだよね!?」







「ちがうよ、本当だって!!



なぁ灯、このお姫さまは灯が連れてきたんだよな!?」







「……………」







三人の子どもたちに詰め寄られ、灯は困ったように汀を見下ろす。





すると汀も、真菰たちと同じようにきらきらとした瞳で灯を見上げて訊ねた。






「ねぇ、本当なの? 蘇芳丸!」







灯は眉をひそめて汀の頭を小突き、黙って歩き出した。








< 580 / 650 >

この作品をシェア

pagetop