*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
兼親は、ゆったりとした足取りで御帳台に近づき、帳の前の畳に腰を下ろした。
「六の君よ、久々だな。
しばらく多用で、なかなか顔を見に参れなかった。
すまぬな。
達者であったか」
六の君は奥ゆかしく膝で床を進み、さらに帳の奥深くに移動した。
(お化粧をしていないのがばれたら大変だわ………)
広げた桧扇と袿の袖の陰に顔を隠すようにして、小さく囁くような声で答える。
「………お久しゅうございます、父上。
わたくしは日々なにごともなく、穏やかに過ごしておりますわ。
それも父上のおかげにございます。
ありがとうぞんじます」
貴族の姫君として相応しい、小鳥の囀りのような声音と、たおやかな物言い。
兼親は満足気に頷いた。
「六の君よ、久々だな。
しばらく多用で、なかなか顔を見に参れなかった。
すまぬな。
達者であったか」
六の君は奥ゆかしく膝で床を進み、さらに帳の奥深くに移動した。
(お化粧をしていないのがばれたら大変だわ………)
広げた桧扇と袿の袖の陰に顔を隠すようにして、小さく囁くような声で答える。
「………お久しゅうございます、父上。
わたくしは日々なにごともなく、穏やかに過ごしておりますわ。
それも父上のおかげにございます。
ありがとうぞんじます」
貴族の姫君として相応しい、小鳥の囀りのような声音と、たおやかな物言い。
兼親は満足気に頷いた。