*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「あのな、お前さん。


俺たちは、盗賊だ」






「まぁ………」






「一旗あげようと京に出てきたはいいものの、職にあぶれて食うに困ってしまった。


そんな奴らがここに集まって来る」






「そうなの………」






「そうして俺たちは、富を独占している金持ちからお宝を頂戴して、なんとか生計を立てているのさ」






「なるほど、よく分かったわ」







汀はにっこりと笑った。






「残忍で冷酷な盗賊だなんていう噂を聞いたことがあったけど、やっぱり嘘よね」






「あぁ、そう思ってる奴もいるだろうが………俺たちは絶対に、人の命だけはとらないんだ。



怪我をさせることも、できる限りしないように心がけている」







群雲の言葉に、灯も小さく頷いた。








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