*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
それを聞いて、汀は満足そうに目を細めた。






「それで………さっきの話は、いったいどういうことなの?」






訊ねられて、群雲は本題を思い出した。






「そうそう。


お前さんの母君は長いこと病気をしていて、大変なんだよな」






「ええ、そうなの」






「しかも父君からの援助がなくなって、食べるものも満足には得られないんだな?」






「…………ええ」






「よし、じゃあ決まりだ。



約束を反故にされた慰謝料として、右大臣邸から金目の物を頂戴しよう。


そして、それを金に換えて、母君に差し上げようじゃないか」







「まぁ………!!」







予想もしていなかった言葉に、汀は口をあんぐりと開いた。







< 598 / 650 >

この作品をシェア

pagetop