*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
その主君の言いつけで、通常は夜になれば下ろすはずの御簾も格子も、今宵は上げたままにしてあった。
六の君は、母屋(もや)から出て廂(ひさし)に座り込んで、上半分があげられた格子越しに、輝かしい月を見上げている。
月明かりの中に浮かび上がる、黒々と艶めく長髪を纏った六の君のほっそりとした姿と、白皙の横顔を見つめながら、露草は小さく相槌を打つ。
「ほんに、佳い月でございますわね」
六の君は振り返り、露草に微笑みかけた。
「………ふふ。
こんな姿、父上に見られたら、きっとまた、ひどく叱られるわね。
御簾も格子も上げっぱなしにして廂に出るなんて、なんとはしたないのだ、って」
六の君は、母屋(もや)から出て廂(ひさし)に座り込んで、上半分があげられた格子越しに、輝かしい月を見上げている。
月明かりの中に浮かび上がる、黒々と艶めく長髪を纏った六の君のほっそりとした姿と、白皙の横顔を見つめながら、露草は小さく相槌を打つ。
「ほんに、佳い月でございますわね」
六の君は振り返り、露草に微笑みかけた。
「………ふふ。
こんな姿、父上に見られたら、きっとまた、ひどく叱られるわね。
御簾も格子も上げっぱなしにして廂に出るなんて、なんとはしたないのだ、って」