*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「我が愛しい六の君よ。



………はじめ、お前がこの邸にやって来た頃は、一体どうなることかと思っていたのだが……。


お前もいつの間にやら、すっかり雅びやかな姫になったものだな」








「………ありがたきお言葉………。



あの頃はわたくしも、礼儀も何も知らないほんの子どもでございました。


父上のお心づかいで、露草という優秀な女房をつけていただき、必要なたしなみや作法を教わっておりますこと、感謝してもしきれませんわ。



かさねがさね、ありがとう存じます」








「うむ………」









六の君の言葉に、兼親は涙も滲みそうな喜びを感じていた。






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