*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「誰が行く?」






灯が短く訊ねると、群雲は少し考えてから言う。






「………この前内裏で騒ぎを起こしたばかりだからな。


少人数のほうがいいーーー俺たち三人で行こう」






「いつ?」





「母君のことを考えると、早いほうがいいな。


明日、いや明後日の夜………」






「あら、今晩でいいじゃない」






汀があっけらかんと言うので、群雲は度肝を抜かれた。






「………いや、お前さん。


初めての仕事だぞ?


色々準備がいるだろう………」







「え? どんな準備?」






「えーと………心の準備とか」






「あら、心の準備ならできてるわ。



そんなことより、早くお母さまにお会いしたいもの」







灯はくくくと笑って群雲の肩を叩いた。







「こいつに心の準備なんかいるもんか。



今晩、行こうーーー」









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