*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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「………頼むから、勝手なことをしないでくれよ」
「はぁい」
「俺が合図を出してから動くんだぞ、合図がないときはじっとしてろ」
「はいはい」
「いいか、絶対に動くなよ」
「はいはいはい」
「勝手なことをして捕まっても置いていくからな」
「んもう、分かってるってば」
東二条邸の築地にはりつきながら口うるさく話しかけてくる灯に、汀はぷらぷらと手を振ってみせる。
「蘇芳丸ったら、そんなに喋りたくって、ばれちゃったらどうするのよ」
「俺だって喋りたくなどない!
しかしお前のこれまでの振る舞いを考えると、口出しせずには」
「あっ!!」
突然小さく叫んだ汀の手に口を塞がれ、灯は黙らざるを得ない。