*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「父上の牛車だわ………。


どこかに出かけるみたい」






「お前を探しに行くんだろう」






「あ、そっか」






汀は灯を見上げ、目を輝かせる。






「行くなら今ね、蘇芳丸!」





「あぁ、車が見えなくなったら、行こう」






群雲は非常事態に備えて、離れたところで待機している。




潜入するのは、二人だ。







「あぁ………どきどきしてきた」






独りごとのように小さく呟く汀の頭を、灯が安心させるようにぽんぽんと撫でる。





「大丈夫さ、俺がいるから」




「まぁ、頼もしい」




「ただし、お前が勝手なことをしなければ、という条件つきだ」




「はぁい」






汀はくすりと笑って、小さく手を挙げた。







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