*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
灯が頃合いを見計らって、手振りをする。




汀は大きく頷き、灯の後に続いた。






予想通り、汀の捜索に人手が割かれているらしく、邸内の警備は手薄だった。




汀が先に立ち、人目を避けながら目的のものがしまわれている寝殿へと向かう。




特に問題もなく、祝いの品がある部屋へと辿り着いた。





「ずいぶん多いな………」




「小さくまとまるものしか持っていけないわねぇ」





「袱紗(ふくさ)に包んで持って行くぞ」





「はぁい」






なるべくかさばらず、価値の高そうなものを選んで包んでいく。




汀の手際のよさに灯は内心目を見張りながら、包みを受け取って背負っていった。





「………こんなものにしておこう。


あんまり大荷物になると動きが鈍くなる」






「はぁい」







汀も小さな包みをいくつか抱えて、立ち上がった。








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