*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
(………の阿呆!!



性懲りも無く………っ!!)







怒りに肩を震わせる灯だったが、折悪しく、すぐ後ろから下仕えの女たちがやって来てしまった。






間仕切りのために掛けられている布、壁代(かべしろ)の隙間を抜けて姿を隠し、女たちが通り過ぎるのを待つ。





その間も苛立ちと不安が収まらない。








(くそ………っ、こうしている間に、あいつが見つかったら………)







唇を噛んで隠れているうちに、ようやく女たちの足音が小さくなった。




灯はひっそりと壁代の陰から出る。







嗅覚を研ぎ澄ませて汀のいる方向を確かめると、足音を忍ばせてそちらに向かった。








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