*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
そのころ、汀は満面に笑みを浮かべて、小舎人童二人に手を振っていた。






「あなたたち!


久しぶりね、元気だった?」






「………あっ!


あ……あ………六の君さま!!」






声をかけられた童たちは、目を丸くして硬直した。






「あっ、分かっていると思うけど、大声を出しちゃだめよ?


私は追われてる身なんだから………」






「は、はぁ………」






「ね、一つお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」







にっこりと首を傾げられて、童たちは戸惑ったように小さく頷いた。







そこに灯が追いついてきた。






「この阿呆!!」




「いたっ!!」






いつだったか、汀から頼まれて運ぶのを助けた赤髪の青年が、思い切り汀の頭をはたくのを見て、童たちは口をあんぐりと開けた。







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