*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「あのね………父上にお伝えしてほしいことがあるの」





「はぁ………」







まだ呆然としている童に笑いかけ、汀は意を決したように言う。






「さぁ、がんばって覚えてね。


『私は盗賊になったので、お邸のお宝を頂戴いたしました』」






「えっ!?」







童二人の視線が、灯の抱えた荷物に集中した。




汀は構わずに続ける。







「続きね。



『私は二度とここには戻りません。


二度とあなたの言うことには従いません。


無理やり連れ戻しても同じことの繰り返しですから、もう私のことは諦めてください』」







「…………はぁ」







童たちは顔を見合わせた。







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