*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
汀は灯の持っていた小包の一つを取って、その中に入っていた祝い餅を二人に渡す。






「ね、お願いね」






「はい………」






花のような笑顔を向けられて、童たちはぼんやりと頷いた。






「じゃ、私は行くから。


父上によろしくね。

もうお会いすることはないだろうけど………お元気でと伝えておいてね」






「はい」






汀はくるりと振り返り、「行きましょ」と灯に言う。




灯は黙って歩き出した。







大荷物を抱えて軽い足取りで去って行く二人を、童たちはぼんやりと見送った。








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