*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語







群雲と合流した後。



戦利品の大部分を市で換金し、今度は汀の母親の家へと向かう。





近づくにつれて家が減り、人の姿も少なくなってきた。






「………あぁ、懐かしいわ。


何年ぶりかしら………」






汀はきょろきょろと辺りを見回す。






「………なんだか寂れたわねぇ、この辺りは………」





「俺もこの辺は初めて来たが………。


町外れは検非違使の目も届かないから、治安が悪くなっているというからな」






汀の呟きに群雲が答える。




灯は何も言わずに汀の隣を歩いていた。






「あ、見えてきたわ。


あれが私の実家よ」






汀が指さすと、群雲が頷いた。






「お前たち二人で行ってくるといい。


俺はここで待っている」






「ええ、分かったわ」







汀と灯は連れ立って歩き出した。







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