*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
初めに灯が侵入し、汀の祖父母が奥にいることを確かめた。
一番遠い垣根の隙間から敷地内に入り、母親の寝所へ向かう。
灯はくんくんと鼻を動かし、汀に分からないように眉を顰めた。
(………あまり良くないな)
心の内で独りごち、溜め息をついて荷物を抱え直した。
汀の案内で、母の部屋にひっそりと入る。
「…………お母さま?」
汀が静かに声をかけたが、返事はなかった。
母屋の中には姿が見えなかった。
汀は首を巡らして、帳台の方へと近づく。
「お母さま、こちらへいらっしゃるの?」
帳を開くと、薄暗い中にうち伏して眠っている人影があった。
それを確認して、汀は息を呑む。
(………まぁ!
お母さまーーーなんてこと…………)
母の姿は、汀の記憶の中にあったそれとは、驚くほど変わってしまっていた。
一番遠い垣根の隙間から敷地内に入り、母親の寝所へ向かう。
灯はくんくんと鼻を動かし、汀に分からないように眉を顰めた。
(………あまり良くないな)
心の内で独りごち、溜め息をついて荷物を抱え直した。
汀の案内で、母の部屋にひっそりと入る。
「…………お母さま?」
汀が静かに声をかけたが、返事はなかった。
母屋の中には姿が見えなかった。
汀は首を巡らして、帳台の方へと近づく。
「お母さま、こちらへいらっしゃるの?」
帳を開くと、薄暗い中にうち伏して眠っている人影があった。
それを確認して、汀は息を呑む。
(………まぁ!
お母さまーーーなんてこと…………)
母の姿は、汀の記憶の中にあったそれとは、驚くほど変わってしまっていた。