*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
六の君は微笑んで軽く首を傾げる。
「あら、寒くなんかないわ。
だって、もう睦月(むつみづき)も終わって衣更着(きらさぎ)じゃないの。
ずいぶん春らしくなったわ。
じきに桜の季節だもの」
高貴な生まれの姫君が、こんな風に外からの視線を妨げるもののない場所に座り込んでいる。
明るい光に露わに照らされ、冷たい風にさらされている。
常識では考えがたい振る舞いである。
それなのに、この六の君は、なんの衒いもなく屈託もなく、自分の姿を顕証に晒すのを厭わない。
しかし、そのこだわりのないご様子が、露草にとっては心を溶かす不思議な魅力となっていた。
教育係の女房を仰せつかっているにも関わらず、その振る舞いに対して眉を顰める気にはならなかった。
「あら、寒くなんかないわ。
だって、もう睦月(むつみづき)も終わって衣更着(きらさぎ)じゃないの。
ずいぶん春らしくなったわ。
じきに桜の季節だもの」
高貴な生まれの姫君が、こんな風に外からの視線を妨げるもののない場所に座り込んでいる。
明るい光に露わに照らされ、冷たい風にさらされている。
常識では考えがたい振る舞いである。
それなのに、この六の君は、なんの衒いもなく屈託もなく、自分の姿を顕証に晒すのを厭わない。
しかし、そのこだわりのないご様子が、露草にとっては心を溶かす不思議な魅力となっていた。
教育係の女房を仰せつかっているにも関わらず、その振る舞いに対して眉を顰める気にはならなかった。