イケメンの顔面踏んづけた結果。
「あの~…行かないとあたし殺されるらしいんだけど」
手を振り上げたまま固まっている黒髪美人に、恐る恐るそう声をかけると
「っいい!?
言っとくけど慧様はあんたみたいな何の取り得もない、平凡女が近づいていいお方じゃないの!!
分かったらさっさと離れることね。
…じゃないと次はこれじゃ済まないから」
最後にあたしをキッと睨み付けて、女子トイレから出て行った。
…見ず知らずの人にブスとかちんちくりんとか何の取り得もないとか…ずいぶん酷い言われ様だ。
あたしは別に何もしてないのに(顔面踏んだけど)…
それもこれも全部アイツのせいだ!!!
「おせぇ。1分36秒オーバーだ」
怒り心頭で放送室に行くと、マイク前の椅子に偉そうにふんぞり返っている奴がいた。
「やっほアヤちゃん♪」
その奥にいる相変わらずチャラついた杉本葵は無視して、まっすぐ新藤慧の元に向かう。
「ちょっとアンタ。アンタのせいで見ず知らずの女子に絡まれたんだけど!!!」
「は?何だそれ」
面倒くさそうに顔をしかめる新藤慧。
「だ・か・ら!
あんたと一緒にご飯とか食べてるせいで殴られそうになったの!!
モテるのは勝手だけど、取り巻きの教育ぐらいちゃんとしてよね!!」
一気にそう捲し立てると、新藤慧が少し驚いたように目を見開いた。
「殴られそうになった?お前が?」
「女子ってこえーな…」
大袈裟に身震いする杉本葵。
「とにかく!
これ以上あんたに関わるとロクなことなさそうだし、もう新藤慧には近づかないから!じゃ!!!」
これで忌々しい奴隷生活ともおさらばだ!!
と清々しい気持ちで奴に背を向けると
「…そんな簡単に済まされると思うなよ?」
パシッと、手首を強い力でつかまれた。