イケメンの顔面踏んづけた結果。
「お前見てるとすっげーイラつく。自分でもわかんねぇくらいすっげームカムカする」
…どうやらあたしは、自分で思っていた以上に奴に嫌われていたらしい。
「…あっそ!じゃぁもう近づかなければ…」
「でも」
あたしの言葉を遮って立ち上がった奴が、強くあたしの腕をつかむ。
…どうやらカラコンは外したらしい。ついでに牙も。
「でも傍にいねー方がもっとイライラする」
…カラコンをはずした黒目がちの瞳が、暗闇の中で艶やかに光る。
「…だから黙って傍にいろよ」
そう言う新藤慧の声は、少し掠れてて。
…あたしの喉はくっついてしまったみたいに、うまく声が出ない。
新藤慧の腕をつかむ手に力がこもって、ただまるで引き寄せられるみたいに、新藤慧との距離がつまる。
…な…にを言ってるのこの子は。
至近距離で絡み合う視線から逃げられない。
ただじっとあたしを見つめる新藤慧は、いつもの新藤慧じゃない。
分かるのはそれだけで
時間はすっかり止まってしまったようで
まるでそこに、重力だけが存在するみたいに
唇と唇が、触れた。