イケメンの顔面踏んづけた結果。
「……何、ふざけたことを」
「ふざけてなんかない。本気」
新藤慧の声がまっすぐ、教室に響く。
「…ふざけるな」
お父さんの声は、怒りを押し殺したように低い。
「モデルなんてあんなバカなこといつまでやるつもりだ?
遊んでいるのもいい加減にしろ」
ガタッと椅子から立ち上がる音。
「これで話しは終わりだ。
仕事があるので、少し早いが失礼する」
…新藤慧は何も言わない。
…なんで、何も言わないの?
遊びなんてそんなこと
絶対ないくせに。
いつだって本気だったくせに。
ガラッ…
教室のドアが開いて、新藤慧のお父さんが現れた。
すぐ前にいたあたしに驚いたように目を見開く。
「…あの」
そのまま軽く会釈をして立ち去って行こうとした新藤慧のお父さんの背中を、気付いたら呼び止めていた。
「新藤慧は遊びでなんかやってないです、モデル」
「…聞いていたのか?」
振り向いたお父さんが、険しい顔であたしを見据えた。
「…すみません。それは謝ります。でも、」
だって
あんな風に言わないで欲しい。
「新藤慧はもう、プロだと思います」
「…プロ?」
お父さんの眉間に、深い皺が寄る。
「はい」
「…そんなこと…君に何がわかる」
そしてあたしに背を向けると、長い廊下を歩いて行った。