イケメンの顔面踏んづけた結果。
「あたしあなたとは結婚しないから」
一橋麗華につれられるまま近くのカフェに入ると、開口一番に麗華が言った。
「は?」
「ショックだとは思うけど悪く思わないでね。あたしあなたみたいな偉そうな男、興味ないの」
「はぁ!?」
何で出会ってまだ一時間も経ってないコイツに偉そうだとかなんとか言われないといけねーんだよ。俺も思ってるけど!
「…あっそ。言っとくけど俺だって、結婚とか全く考えてねーから」
「へぇ、そう。じゃぁ話は早いわね。今度のお見合い、断って」
運ばれてきたコーヒーを一口飲み、麗華が続ける。
「形だけは一応してあげてもいいけど。ていうかしなきゃ、お互いの親が許さないだろうし。
間違っても、よろしくお願いします、なんて言わないでね」
「俺だってそのつもりだったっつーの」
どこまでも上から目線の女だな。
「…ふーん」
意味深に顔を覗き込んでくる麗華。
「あ?なんだよ」
「好きな人でもいるの?アナタ」
「は、はぁ!?」
…なぜか一瞬、掠めるように浮かんだアイツの顔。
「いねーよ!!!」
それを打ち消すように叫ぶと、「いるのね」と涼しい顔で返された。
「お前人の話聞いてんのか!?だからいねーって!!」
「…あっそ?そう言い張るならそれでもいいけど。
あたしはいる」
そしてお上品にナプキンで口元を拭く。
「全く相手にされてないけどね。
お互いがんばりましょ?」
「だから誰も好きじゃねーよあんな奴!!!」
「あんな奴って…」
呆れたように呟く麗華に、アイツの残像を打ち消すのに必死な俺は、全く気付いていなかった。