イケメンの顔面踏んづけた結果。





それから暫く挨拶回りみたいなのをしていると。




「あら慧、お久しぶりね!」




…なんだか異様に綺麗な女の人が話しかけてきた。




パッチリした大きな目にぷっくりした唇。



…着ているのはあたしと同じ赤を基調としたドレスなのに、どうしてこんなに差があるんだろう…?





「…あー、なんだ菫(スミレ)か」




面倒くさそうな新藤慧。



す…菫さん?



名前まで可愛い。





「なんだって何よ!」




そして可愛く怒って見せると、その大きな目をあたしに移した。





「で、そちらのちんちくりんは誰かしら?」





ちんちくりん!?





「…あー…ちんちくりん」




そしてやっぱり面倒くさそうに新藤慧がそう紹介する。




おいコラ!!




「慧ってば何でこんな子連れてきたの?」




意味が分からない、といった感じの菫…さん。(一応“さん”付け)




「あ?知らねーよついてきた」




はぁ!?




「あんたが無理矢理連れてきたんでしょうが!!」



「そうだっけ?」



「そうだよバカ!!!」




お前は物忘れの激しい爺さんか!!!






「…なんなの?この口の悪い女」





その様子を見ていた菫さんが、眉間に皺を寄せてそう言った。





「きっと素晴らしい家柄のご出身なんでしょうね?失礼ですけど、ご両親は何をしてらっしゃるの?」





出たこの質問。お金持ちの間ではもしかして【今日はいいお天気ですね】くらいセオリーな会話なのだろうか。





「…父は普通にサラリーマンですけど」



「サラリーマン…ねぇ」




バカにしたようにふっと口角をあげる菫(もはや呼び捨て)。




そしてまるで汚いものを見るような目であたしを見て、言った。





「あなたみたいな容姿も家柄も平凡な女が、慧の隣に並ぶなんて…ありえないわ。恥を知りなさい!」





…え、ちょっと待って。あたし何で怒られてんの?





恥を知れって…




あーダメだ。なんかムカムカしてきた。







< 51 / 290 >

この作品をシェア

pagetop