イケメンの顔面踏んづけた結果。
それから暫く挨拶回りみたいなのをしていると。
「あら慧、お久しぶりね!」
…なんだか異様に綺麗な女の人が話しかけてきた。
パッチリした大きな目にぷっくりした唇。
…着ているのはあたしと同じ赤を基調としたドレスなのに、どうしてこんなに差があるんだろう…?
「…あー、なんだ菫(スミレ)か」
面倒くさそうな新藤慧。
す…菫さん?
名前まで可愛い。
「なんだって何よ!」
そして可愛く怒って見せると、その大きな目をあたしに移した。
「で、そちらのちんちくりんは誰かしら?」
ちんちくりん!?
「…あー…ちんちくりん」
そしてやっぱり面倒くさそうに新藤慧がそう紹介する。
おいコラ!!
「慧ってば何でこんな子連れてきたの?」
意味が分からない、といった感じの菫…さん。(一応“さん”付け)
「あ?知らねーよついてきた」
はぁ!?
「あんたが無理矢理連れてきたんでしょうが!!」
「そうだっけ?」
「そうだよバカ!!!」
お前は物忘れの激しい爺さんか!!!
「…なんなの?この口の悪い女」
その様子を見ていた菫さんが、眉間に皺を寄せてそう言った。
「きっと素晴らしい家柄のご出身なんでしょうね?失礼ですけど、ご両親は何をしてらっしゃるの?」
出たこの質問。お金持ちの間ではもしかして【今日はいいお天気ですね】くらいセオリーな会話なのだろうか。
「…父は普通にサラリーマンですけど」
「サラリーマン…ねぇ」
バカにしたようにふっと口角をあげる菫(もはや呼び捨て)。
そしてまるで汚いものを見るような目であたしを見て、言った。
「あなたみたいな容姿も家柄も平凡な女が、慧の隣に並ぶなんて…ありえないわ。恥を知りなさい!」
…え、ちょっと待って。あたし何で怒られてんの?
恥を知れって…
あーダメだ。なんかムカムカしてきた。