イケメンの顔面踏んづけた結果。
スタジオを出て、新藤慧と二人すっかり夜中になってしまった道を歩く。
「行きもそうだったけど、今日は車呼ばないんだ?」
「あん時は撮影に間に合わなそうだったから車だっただけで、普段は電車だから」
眠そうに欠伸をしながら、そう答える新藤慧。
へぇー…超意外だ。
それにしても…寒い。
でも、それ以上に、夜空に浮かぶ月が綺麗で。
澄み切った空気がなんだか心地よい。
昔から好きだ。
冬の夜を歩くのは。
「新藤慧はさ」
ボンヤリ月を眺めながら、あたしは前から気になっていたことを尋ねた。
「どうしてモデルはじめたの?」
「あぁ?別に…大した意味なんてねぇよ。ただのスカウト」
ふーん…まぁこんなイケメンが歩いてたら、スカウトされまくって当然か。中身はともかく。
「でも新藤慧ってモデルの仕事好きでしょ」
「…あぁ?」
怪訝そうにあたしを見下ろす新藤慧。
「見てれば分かるよ、なんとなく」
だって新藤慧、学校ではいつもつまんなそうなのに、撮影中だけはなんか楽しそうだもん。
いい笑顔で笑うしね。
「まー頑張ってよ、ケイさん?」
「…奴隷のクセに偉そうに」
新藤慧はフッと不機嫌そうに口角をあげると、また前に向き直った。
「はぁ?応援してんじゃん」
「いらねぇブスの応援とか」
「あんたねぇ…」