清吾
序章

淡泊

『・・・続いてのニュースです。カナダ北部で大規模な竜巻が発生致しました。幸運にも竜巻による・・・』

日曜の午後、アナウンサーが現実感のないニュースを抑揚のない声で伝えている。
狭いワンルームにむりやり押し込んだソファに横になり、放送に何を感じ取ることもなくただ見ていた。


まぁ、5年も一人暮しをしていれば日曜の午後はこんなものだ。20歳そこそこで故郷を飛び出し、『明るい未来』があると信じて都会で生活を始めたものの現実は虚しく、ただ時を刻んでいく。

5年間同じ仕事をしているが、別に今の仕事が嫌いなわけではない。人間関係が複雑で、心にストレスが溜まっているわけでもない。ただ日々の生活があまりに淡泊で、何か漠然とした不安だけが募っていく。

一人で生活していると、休日にしなくてはいけない事がある。一週間ため込んだ洗濯や、ゴミ捨て、掃除等など。昼過ぎに起きて用事を全て終わらせるといつのまにかもう日が暮れている。
夜は、家の近くでご飯を済ませ、テレビを見ながらただ時間を消費する。深夜になると明日の仕事の段取りを考えながら寝る。
平日は淡々と仕事をこなす。休日になる・・・

こんな生活を、清吾はただ繰り返していた。
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