華の欠片


正直言い当てられた男は眉をひそめた。





「でも、お前を長州の者として疑ってる

訳ではない。最近浪士組を探ろうとして

いる連中は多いからな」





そう言って男の目付きが悪くなった。

こいつ....そうとう疑い深い人間だな....





「で、お前は何者だ。正直に言わないな

ら女だろうと今ここで斬る。とりあえず

は、拷問を解いたか、お前の返答しだい

でまた逆戻りかもしれんな。

敵ならば女だろうと拷問にかけることは

出来る。

あいにく俺には情けや慈悲などは持ち合

わせていないのでな。」





私は怪しく口角を上げる男を見上げた。




「私の名は里原椿。そして、何処の間

者でもない。」





「じゃあ、何故あんな時間に歩いてたん

です?」




メガネを掛けた優しそうな人が聞いてき

た。




「私には帰る家がない。だから各地を転

々としていた訳だ。丁度その日も野宿で

夜を明かすつもりだった。

なのにぶつかって来た男が私に楯突いて

来たから斬った。

それだけだ。

ちなみに私がここへ来た前日に殺された

五人の男に手を下したのも私。

町でかなり噂になってたな…」


表情一つ変えずに話す少女を唖然として

話を聞くオトコ達は見ていた。



「何故、まだ子供の癖して家が無いんだ

。親は。」




「子どもとは侵害だな…。

私はもう16だ。子どもなどではない。

あと親は…と言ったな。

殺されたよ。長州の輩に。

もう、これでいいだろ?

他人にペラペラと素性を明かすのは好ま

しくない。」





「.....そうか。其の話嘘ではないんだな

?」





「嘘を付いて何になる?」






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