華の欠片
「それでだな、これは大変言いづらいの
だが、」
口を開いたのは近藤だった。
「なんだ。」
「椿くんの部屋の事なんだが、空きがな
いんだ。
椿くんが今まで寝てた部屋は元々は応接
室なんだ。
椿くんは女の子だから隊士と大部屋とい
うわけにはいかないだろう。
基本幹部は一人部屋だからその誰かと相
部屋になってはくれんか?」
申し訳なさそうに近藤は言葉を並べてく
。
「別にいい。今まで木の上とか屋根とか
で寝てた私からすれば、誰かと相部屋で
も部屋があるだけで十分だ。」
「木の上⁉屋根⁉いったいどんな生活し
てたんだ。」
藤堂が大きな声を張り上げる。
「平助うるせぇ。」
「だってよぉ、土方さん。まだ年いかな
い女の子が.....」
「藤堂、屋根や木の上も案外いい所だぞ
?敵から身を潜めるには最適の場所だ。
」
「猿かよ…」
「あぁ⁉︎」
「ちょっとぉ!
土方くんも椿くんも落ち着いて!」
今にも喧嘩になりそうな二人を近藤さんがなだめる。
椿は藤堂に告げると土方の方へ向き直
った。
「で、私は誰と相部屋になるんだ?」
「.....そうだな。斎藤が一番妥当かもな。
丁度同じ班だし、これからの仕事で共に
する事が多くなるはずだ。
....斎藤、いいか?」
「土方さんの頼みならばなんなりと。」
「里原もいいか?」
「あゝ、正直な所土方以外なら誰でもいい」
「あ"っ⁉てめー。どーゆー事だ!」
「どーゆー事もこーゆー事だ。」
斎藤さんは無口だけど、その方が過ごし
やすい。変な気も回さなくてすむし。
何より、気が楽だ。
その日の夕刻、隊士達に椿の紹介があ
った。そこに集まった隊士は沖田と椿の
試合を見ていた人がほとんどで、ざわ
めきが耐えなかったという。