華の欠片
~椿~


私は斎藤から包帯を受け取り掛け鏡の前

まて行く。

掛け鏡は少し埃を被ってる様だったが、

そこまで酷く汚れて居るわけではなかっ

た。


斎藤に解いてやろうかと聞かれたが傷口

を見られるのは嫌だったので断った。



後ろで縛って固定為れていた部分を解き

一巻きずつ丁寧にといていく。




「......っ」



包帯がすべて取れて患部が鏡にはっきり

と映る。




それなりの覚悟はしていたがあまりに酷

い右目の状況に絶句した。



「里原、ちょっと見せてみろ。」



斎藤が近付いて来たので掛け鏡を壁から

外し床に伏せ、右目を手で覆い隠す。


「む、無理だ!」




「いいから、悪いようにはしない。見せ

てくれ」



斎藤がじりじりと近付いてくる。

私の右目は膿んで血が滲んでいた。こん

な酷いくて気持ち悪いモノを見せるわけ

にはいかない。



「駄目だ!こんな気持ち悪いモノ斎藤に

見せられないっ!」


私は首をふってしゃがみ込んだ。

ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ……

私がこんな声を挙げるなんてらしくない。

どうも斎藤と居ると調子が狂う…。



そしたら斎藤は床に膝をつき、私に目線

を合わせて優しく宥めるように言った。





「大丈夫だ。ほら、見せて。....椿」



私は今まで苗字呼びだった斎藤にいきな

り名前で呼ばれドキリとした。


それに、斎藤の今までの口調とは違う。

とっても優しい口調だ。



私は渋々と右目を覆ってた右手を外し、

下をうつ向いた。






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