華の欠片
里原 椿
~文久三年.四月~
壬生浪士組屯所にて
浪士組の屯所の庭には鮮やかなピンクの
桜が満開を迎え咲き誇っている。
その一角の部屋に何やら浪士組幹部が集
まっていた。
「まさか、あの男どもが殺られるとはな.
...。我々が手を下す手間が省けた.....か...」
「でも、土方さん。奴らを殺ったのは誰
なのでしょうか.....?彼らも相当な剣の使
い手だったはず.....。なのに....」
「あゝ...総司の言うとおり、かなりの腕
の持ち主だった....
だから迂闊に手を出せずに居たんだ。
奴らに殺られた者も数多くいる。」
「あ…!そうだ、土方さん!
その五人を殺した奴を浪士組に入れちゃ
えばいいんじゃね?
それだけ優れた剣の使い手ならかなりの
戦力になるし、何より浪士組も人手不足
だし…」
「平助、何故いつも単純思考な考えしか
出来ないんだ。
確かにうちは人手不足だとも。
それに強い隊士も欲しい。
だがな…そいつが倒幕を目論む奴だった
らどうするんだ....?
敵かもしれねぇ奴を入れる訳にはいかね
ぇ。」
原田の発言にそれもそうだと言わんばか
りに回りの平助以外の幹部達が頷く。
「逆に考えると、そいつが俺らの敵かも
しれないかぎり野放しにするわけにはい
かない。
危ない芽は早いうちに潰すのが望ましい
。
そうでなくてもそれだけの剣の腕を持っ
てる奴を野放しにするのはマズイだろう
。」
「何も関係ない一般人が殺られてからじゃ
遅いからな…」
「では、副長。巡察を今までより強化す
るべきではないでしょうか...?」
「あゝ。最初からそのつもりでここに皆
を集めた。
詳しく決まり次第本日の夕刻までに連絡
する。」
土方はそう言うと、近藤と山南を引き連
れ、隣の部屋へと入って行った。