華の欠片
.......................それは突然の事.........
.........
......一瞬何が何だかわからなくなった。
確かに私は立ち上がって井戸に向かおう
としたはずだ。
だが今、私は斎藤の腕の中にいる。
私は井戸へ向かう為、斎藤の横を通り抜
けようとした。
その時だ。ふらふらと歩く私の手を斎藤
は自分の方に引っ張ったのだ。
その勢いで私は斎藤の膝に倒れこんでし
まったらしい。
よって斎藤の腕の中にいる私は必然的に
斎藤を見上げる様子になっている。
「斎藤.......?」
「椿、嘘をつくな。
本当は体調が優れないのだろ?
顔色が悪いし熱い......」
私は目を見張った。
斎藤の額と私と額がピッタリと重なった
からだ。
いきなりの事であったのでびっくりして
声が出ない。
呼吸が止まるかとも思った。
「ほら....椿。
熱があるじゃないか.....
あとの事は俺に任せて早く休め。」
私は斎藤にも迷惑を掛けてしまった。
私は口を開こうとしたが、意識が先程よ
り朦朧として上手く言葉にならない。
だんだんと闇に吸い込まれていくようだ.
...
そして私の記憶はそこで途絶えた。